美容院調査が最近の趣味であるぼくが、ある平日の夜、美容師さんにゲットハントされた。
京都事務所での仕事を終え、いつもの店舗ミーティングに参加するため、ある大阪の駅に到着した。
時間は夜9時。
Tシャツに薄手のジャケットを羽織った僕は、少しの肌寒さと湿った空気のニオイに梅雨のはじまりを感じながら、スタッフに渡さないといけない大きな荷物を抱えて歩いていた。
駅から店舗までの慣れた道を、少し早足で、人波をかきわけながらテクテクと進みながら僕は、
「今日はどんな流れで話をしようかな〜」
なんて、色々とミーティングの内容を考えながら強張った顔で歩いていると、
突然、駅の階段を降りですぐのバス停から1人の男性が近づいて来てこう言った。
『お兄さん、すみません!ちょっといいスか^^』
不意を突かれた僕は一瞬戸惑いながら、その男性を一瞥。
身長180弱でガッチリ系、歳は僕と同じくらいか...ちょい上か。髪は15レベルくらいのベージュで所々にハイライトが...ってもう明らかに美容師さん。
『ちょっっっとだけ!ホンマちょっとで良いんで、お時間くださいっ!!』
あぁ〜こんな時間にゲットハント大変だなぁ〜頑張ってんなぁ〜なんて、
色々頭の中で考えが巡ってるうちに、会話をどんどん進めてくる美容師さん。
普段カットはどこでしてるんですか?
最近いつカットしたんですか?
ぼく隣の駅で美容師してます。
ぜひカットさせて下さい。
めっっちゃ一生懸命やります。
こんなインスタやってるんス。
本当におねがいします!
ぜっっっったいカッコよくします!
そう言われれば普段から決まった人にカットしてもらう事がほぼ無い。
大体はNYNYやAshも含めてスタッフに『来てくれ』と頼まれたり、
もしくは業界で気になる美容院をリサーチしに行く事が殆どで、ゲットハントなんてする事はあっても、される体験は実は初めて...。
リーフでのハンティングも然り、たくさんの人に声をかけて来て貰う所まで漕ぎ着けるのは、本当に大変よなー。
今でこそWebやSNSやーと〝デジタル集客の最前線〟で必死こいてる自分。
昔は現場の美容師として同じように大阪で、ハントやゲットもバリバリやってた時代があったことを猛烈に思い出した。
値段や、日にちや、と聞いてくるその美容師さんの話を遮り、ふとその人自身に興味が湧いた僕は逆に質問をした。
岩田『へー。所でお兄さん、おいくつなんですか?』
美容師さん『ぼく37っス。』
岩田『そうなんですね。今日はずっとここでハントしてるんですか?』
美容師さん『はい!営業終わってからスね。ウチのスタッフが一緒に来てるんで、僕も頑張らなあかんなって!やってるんス』
岩田『あ、後輩さんのお客さんを探してるんですか??』
美容師さん『あ、いえ!僕がカットさしてもらうっス。僕実はオーナーなんですけど、スタッフだけにさせてると示しがつかなくて...』
岩田『そーやったんですね。大変ですね』
美容師さん『いやぁ、でも実はウチのお店、ホットペッパーとかに載せてないお店なんで、自分で頑張らないとダメなんです。だからこうやってお話聞いてもらえるだけでホンマ嬉しいっス!』
岩田『......。』
やれminimoや、コラムやと普段からデジタルの事ばかり、クチをすっぱくして社員に話をしている僕。
デジタル活用はもちろん時代の流れだし、使わないとダメなツールではある。
けどNYNYの中にも勿論、アナログで一生懸命リーフやティッシュ、ポスティングと〝自分の足で〟お客様を集めて頑張ってるお店もある。
デジタルとアナログは結局、うまくブレンドして使うのが1番効果を発揮するもの。
でもデジタルを全く使わないその美容師さんの話を聞くうちに、その想いやポリシーに改めて〝美容師の幅〟を感じた僕は、その美容院に行ってみる事にした。
(というより半分話のネタになるなーなんて思いながら。笑)
『本っっっ当にありがとうございます!絶対カッコよくします!!よろしくお願いします!!!』
ミーティングを終えた僕は、家に帰って早速、もらったチラシを片手にスマホで検索した。
一応、申し訳程度にホームページが存在し、更新はまちまち。
渡されたインスタのアカウントを調べると、スタイルというよりも、スタッフとお客様の笑顔が並ぶ素朴な印象だった。
もしこれがNYNYのスタッフなららめちゃくちゃ言いたいことは沢山ある。
でも極力クリーンに、『駅でハントされたお客様の気持ち』を味わい、ドキドキし、緊張を噛み締めながら予約日を迎えた。
お店の場所は普段からよく通る道沿いにあり、調べなくても大体の位置はわかっていた。
予約時間に店の前に差し掛かると、金髪のアシスタントの男の子(インスタで確認済み)が笑顔で扉を開けて迎えてくれた。
『来てくれたんスね!ありがとうございます!』
嬉しそうなオーナーさん。
まぁ、適当に予約取って来ないお客さんも沢山いるだろう。
行くなら行くと約束して、無断キャンセルするのも、同じ業界の人間として絶対出来なかった。
顔の割れてない美容院に行くときは、なるべく身元を明かさない僕。
極力、お客様の気持ちを味わう事に徹する僕は、そのお店やその美容師さんのナチュラルな仕事を感じることができる。
基本お任せで、ほぼ言われるがままにカラーとカットをしてもらう。
僕も会話をそこそこ(あえて)広げるので、毎回楽しく美容院を味わう。
理容師の免許も持っているというオーナーさんに勧められ、顔剃りもしてもらって大満足。
(実は顔剃り初体験...)
↑これだけ撮らしてもらった笑
勧められるがままにワックスも購入し、丁寧にセットの仕方も教えてもらい、お店のインスタ用写真をオーナーさんとパシャリ。
およそ2時間弱の美容院体験が終了。
美容師こそ美容院をたくさん経験すべきだと、いつも思う。
憧れの美容院も、街の無名な美容院も、
ただ自分の仕事と比べて優劣を分析するのではなく、
『美容師という仕事はこうゆうものだ』
と毎回いろんな出会いと発見で、心が揺れる。
10年現場で働いて、3年本部の仕事をしている僕が自分の経験値で感じる、美容師という仕事。
今回出会ったオーナーさんも、命張って美容師をしていた。
僕らが普段触れている『情報』とは全く違うコミュニティーにいるけど、
お客様や地域との繋がりをめちゃくちゃ大事にする〝ポリシー〟を凄まじく感じた。
ああ、僕はこの業界が好きで居るんだな。
さて明日も頑張って仕事をしよう。
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